モデルハウスを見学したころ、営業担当の方に売電収入の試算シートを見せてもらったことがあります。何kW乗せれば年間いくら入る、というあの定番の説明です。今になって思うのは、売電収入を期待するという発想自体が、もう時代遅れになりつつあるということです。
売電単価は下がり、買電単価は上がった
太陽光の固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年当時、住宅用の買取価格は1kWhあたり42円でした。それが年々引き下げられ、今では十数円の水準です。かつての「乗せれば乗せるほど儲かる」という売電の魅力は今はもうありません。太陽光なんて載せずに買電したほうがよっぽど初期コストもかからず楽だと思います。
ただ、電力会社から買う電気は値上がりを続けています。我が家が契約する従量制の料金では、使用量が多い区分だと1kWhあたり40円台に達します。売れば十数円、買わずに済ませれば最大40円超。同じ1kWhでも、売るより自分で使うほうが2倍以上の価値があるという逆転が起きているわけです。
わが家が9.6kWを「自家消費前提」で搭載した理由
わが家の太陽光パネルは9.6kW。一般的な搭載量(3〜5kW程度)と比べるとかなりの大容量ですが、売電で稼ぐためではありません。たくさん発電して、できる限り自分で使い、電力会社から買う量を最小にする。その設計思想から選んだ容量です。
実測:発電の6割近くを自分の家で使っている
実際に住んでみた数字を出します。年間の発電量はおよそ1万2千kWh。そのうち6割近くを自宅で消費し、残りを売電しています。年間の売電収入は約8万円、電気代は約14万円。差し引きでは年6万円ほどの持ち出しですが、太陽光がなければ自家消費していた分も全部買電になっていたわけで、その差は年間で十数万円規模になります。
蓄電池12.8kWhで夜間もカバー
太陽光だけでは、夜や天気の悪い日は発電できません。わが家は12.8kWhの蓄電池を組み合わせて、昼間の余剰電力を貯めて夜に回しています。実測では月に200〜300kWh前後を充放電していて、1日あたり7〜9kWh分の夜の電気を太陽光の充電分でまかなえている計算です。売電収入はその分減りますが、買電量はもっと減る。蓄電池は災害への備えであると同時に、電気代を最小化するために使用しています。
高気密高断熱だからこそ太陽光が活きる
エアコン1台で冬が越せる家は消費量が少ない
わが家はC値0.4、UA値0.22という高気密高断熱仕様です。真冬でも1階のエアコン1台、設定温度18~20度で家全体が暖まるので、暖房の電力消費が一般的な家より大幅に少ないと思います。消費が少なければ、太陽光の発電でカバーできる割合も高くなります。断熱性能が低い家で大容量の太陽光を載せても、消費量が多すぎて焼け石に水になりかねません。高気密高断熱があってこそ、自家消費は成立します。
夏の2階はさすがにエアコンが必要
正直に書くと、夏は2階にもエアコンが必要です。1階のエアコンだけでは2階はやや暑くなります。ただ、太陽光の発電が最も多い夏場に、エアコンの消費電力をそのまま自家消費でまかなえる構図は理にかなっています。実際、夏の電気代は月2千円台まで下がる月もあります。逆に冬は発電が減って暖房が増えるので月2万円を超える月もあり、季節の振れ幅はないとは言えない数字ですね。
第一種換気との組み合わせで消費をさらに抑える
わが家は熱交換型の第一種換気を採用しています。換気で外気を取り込む際に熱を回収するため、冷暖房の負荷が小さくなります。換気自体に若干の電力は使いますが、それを上回る省エネ効果があります。断熱・気密・換気・太陽光・蓄電池を一体で考えることが、家全体のエネルギー消費を小さくする近道だと感じています。
費用と回収の話も正直に
太陽光と蓄電池の設置費用は、我が家の場合あわせて300万円ほどかかりました。ZEH関連の補助金は16万円。正直、16万円の補助金でお得に導入できたという感覚はありません。電気代の削減と売電を合わせた実質的な効果で少しずつ回収していく、長期戦の設備です。
だからこそ、設置を迷っている方には、回収年数の試算だけで決めないことをおすすめします。我が家にとって太陽光と蓄電池は、電気代の高騰に振り回されない安心感と、停電時の備えを含めた保険のようなもの。数字の損得に、暮らしの安心という値段のつけにくい価値が乗っている感覚です。
まとめ:売る太陽光から、使い切る太陽光へ
太陽光を導入する目的は、売電収入を得ることから買電量を減らすことへ移りました。わが家の9.6kWと蓄電池12.8kWhの組み合わせも、その考え方に沿った選択です。電気代がゼロになるわけではありませんが、これだけ大きいオール電化の家で持ち出しが年6万円ほどに収まっているのは、性能の高い家と大容量太陽光がかみ合った結果だと思っています。これから載せる方は、売電の試算シートより先に、どれだけ電気を使わない家を作るか、ということを詰めて考えるのがおすすめです。


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